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えーまずは簡単な前フリとして、Googleという巨大システムの根幹に横たわる構成原理と米国法体系との関係から…… ともかくですな、今回のGoogle×著作権事件のいちばん根っこにあるのは、 というおそるべき真実なのですよ、みなさん(と居間に集められた事件の関係者一同を見渡す)」 S「でも、その結論へとびつく前にいろいろ説明させてください。まずは、近代西洋の法律体系というものには大きく分けて2つの系統がある、という第1の事実から。このへんに関してのまとまった説明は、日本語で書かれたものだと……このへんかな? 一方には大陸法civil law、もう一方には英米法common lawってのがあると。で、著作権についての発想が両者ではかなり違ってるらしいんですね。 この法体系というか法思想の違いなんですが、新城の理解したところでは、 ということではないかと。あくまでイメージ重視ですが。 X「ふーむ法体系の違いねえ……(Wikipediaを覗き込んで)そういえば日本て5月から裁判員制度になるけど、あれはどっちかってえと英米法のノリじゃねえの? でも日本は大陸法の系譜に入ってるんだよな」 S「明治時代に、たしかドイツから輸入というか翻訳というか、学んで持って帰ってきたんじゃなかったでしたっけ」 さて、事実その2。 今回、Google×著作権という事件が起きたのは、米国内であるということです。 ということはつまり『著作権てのは複製権のことだよん』と考える人たちのあいだで起きた、ということになります。どっかからインスピレーションを受けて新しい創造的な何かを魂の内で生み出した素晴らしい個人を最大限に尊重しませうという大陸法のノリ*2ではなく――いろいろアイデアを貸したり借りたりすることをうま~く案配することで、社会全体がちょっとづつ改善されてゆく(その途中でドタバタは当然おきるけど、そこはまあ目をつぶって/弁護士が儲かるのでもっとドタバタしようぜ!みたいなノリも含めて)ことを尊重しよう、という発想で。 で、事実その3。Googleは以前に『勝手に検索して表示しやがって、キャッシュとかいう方法でもって人のデータをコピーしとるやろ、それって無断複製ちゃうんかゴルァ』と訴えられたことが実はあるのですが……そこで、 みたいな判決を勝ち取っているのです」 M「……え? 二次著作物って2種類あるんですか?」 S「大きく分けると、そういうことらしいよ*3。パロディ作品の扱いなんかも、その枠組みで処理されてるっぽい。オリジナル著作物から二次的/事後的に生み出されるものとして、derivativeとtransformativeという2種類があり得る、そして後者であるためには何らかのオリジナリティの付加なり目的の変更なりが必要です……というのが、米国の現行の法体系のもとでの判断なわけだ。これが、ものすごく重要なポイントになる。 つまり…… んだ。いってみれば、Googleは毎秒ものすごい勢いで、全世界という書物のパロディを創作して/させて、自らの内で流通させているわけだ」 Y「え、てことはグーグルって世界最大の同人サークルなんですか?」 S「法律的にはそういうことだね。もしくは全世界のユーザという同人作家たちに新刊の原稿を毎秒発注してるサークルの営業担当というか。飛浩隆さんの表現を敷衍するならば……僕たちはGoogleという覗き穴を通して、世界を眺めているのではなく、Googleのための世界’を日々創作しているんだ」 というわけで、最初のテーゼに戻ってくる。僕たちは、Googleを使ってどこかのサイトを閲覧しても、そのサイトの著作権者にお金を支払わなくてもいい。なぜか。実は、僕たちは検索することで何かちょっとだけ新しいもの/オリジナルなもの/変容したものを創っているんだ。検索閲覧という行為……柳川さんによればググる権利……は、僕たちがコミケで同人誌を並べて売ったり買ったりしてるのと同質のことなんだよ。米国著作権法の解釈によれば」